大  雪 [ちょっと、一息 43]


[雪]大  雪



    こんなに降るとは思わなかった。

    水分を多く含んだボタ雪だから、あっという間に積もる。

    ベランダに積もった雪をかいても、すぐにまた白くなるので、今日のところはこの辺でと・・・諦めた。

    ところで、人間は、弱っている時に親切にしてもらった人に対しては、その人が大変な状況に遭っている時は、今度はこちらが助けてやりたいと思うものだが、弱っている時にさらに辛い仕打ちをした相手に対しては、相手が困っている時ほど、倍返しをしてやりたいと思うものである。

    今日は、近所の主婦とそんな話題で盛り上がった。

    わたしは、以前、今以上に脚も身体も思ったように動かなかったのだが、共同浴場などでは、それを知りながらわざと足元に洗面器を置かれたり、脱衣所で服を取りにくくされたこともあった。

    足元にいきなり洗面器を置かれ、思わず転びそうになったこともあり、脱衣ボックスの前で無駄話をしつつ場所を陣取られれば、服を取るために容易に動かない脚で何度もその前を行き来しなければならなくて、本当に疲れたことも度々だった。

    年配の女性の中には、何が気に入らないのか、そうした嫌がらせを堂々とする者がいる。

    しかし、これまでそうしたことをして来た相手も、年月が経てついに自分が脚の痛みに苦しむようになった。

    その女性が最近、珍しくわたしにこう話しかけて来た。

    「医者からは、運動不足で筋肉が落ちたために痛むんだから、歩く練習をして下さいと言われるが、そんなこと出来ないよね。歩けないうちは、出来るだけ安静にしていた方がいいと思う」

    わたしの答えは、

    「そんなことありませんよ。頑張って歩いた方がいいでしょう。わたしだって、何年も頑張ってここまで歩けるようになったんですから、歩いたらどうですか?足元に洗面器を置かれても、脱衣所で服を取りにくくされても、いつか見返してやろうという気概でウォーキングを続けたんです。そういう人には倍返ししてやろうという気持ちがあれば出来ますよ」

    である。

    女性が自分のことを皮肉られていると気付いたか否かは定かでないが、そのまま絶句していた。

    この話を主婦にしたところ、

    「自分もいつか大変な状況に追い込まれることもあるかもしれないと思えば、そんな嫌がらせは出来ないものなんだけれど、人って、いざ自分の身に降りかからないうちは判らないものなんだよね」

    と、溜息をついた。

    人は皆いつかは歳をとる。

    老いて身体の自由がままならなくなった時のことを考えながら、日々の行ないを慎むべきである。

    天に向かって唾吐けば、必ず自分に戻ってくることを、元気なうちにこそ頭の隅に置いておく必要があるのかもしれない。

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