言葉は使いよう [心理の不思議 9]


[ペン]言葉は使いよう



    本の買取りを専門としている企業が、始めに考えた宣伝文句に「本、買います」というのがあったそうだ。

    しかし、この言葉を読んで、本を売りに来た客はあまりいなかったそうである。

    そこで、今度は、「本、お売りください」と替えたところ、お客が来るようになったというのである。

    「買う」というのは、企業側の言い分である。

    しかし、「売る」という行為は、客側の判断にゆだねられたものである。

    ここに、この会社の業績向上の鍵があったのだそうだ。

    人間は、決めるのは自分で、相手ではないというプライドを誰しも持っている。ここをうまく利用した訳である。

    とかく、病院や自治体でも、住民に検診の大切さを説いている。

    その係の人たちの言葉を聞くと、たいていが、こういう言い方である。

    「ご自分の健康のために、検診を受けましょう」

    でも、この言い方では、おそらく率先して検診を受けようと思う人は増えないであろう。

    特に、高齢になればなるほど、体力的にもきつくなるし、面倒くささの方が先に立って、関心は低くなるはずである。

    そして、この言葉である。

    「ご自分のために・・・・」

    人間は、自分のために何かをしましょうと言われて、動く人はあまりいないのである。自尊心を強く持つ人に限って、その傾向は顕著になる。

    そして、「・・・・しましょう」などと、他人から促されて何かを行なうなど、プライドが許さないのだ。

    しかも、検診という行為は、たとえ医療者が相手とはいえ、赤の他人の前で恥ずかしい格好をしなければならないという、これ以上ないリスクを伴うことである。

    簡単に、承服できる問題ではない。

    では、どのように説得すればいいのか?

    上記の例を参考に考えてみよう。

    つまり、検診対象者に自らの意思で検診を受けようと思わせればいいのである。

    そこで、こういう言い方に替えてみる。

    「お願いですから、わたしのために検診を受けて頂けませんでしょうか?ノルマが達成できないと、上司に叱られてしまうんです」

    人間は、自分のためにはやりたくないことも、他人の役に立つことならば一肌脱ごうという気持ちになるものなのだ。

    しかも、この言葉を、出来るだけ権威のある人に言わせることで、相手の受けとめ方は更に重くなる。

    たとえば、医師の口から、「ぼくのために検診を受けて頂けませんか。お願いします」などと言われれば、渋々でも重い腰をあげる高齢者も増えるのではないかと思われる。

    人を動かす時に一番大事なことは、その行為が自分のためというよりも、別の他人のためになるという「役に立つことが出来る」という気持ちをくすぐるところにあるのだ。

    「本、お売りください」も、「本を売って頂かないと、会社が立ち行かないんです。お願いします」の意味を汲んで、「じゃァ、おれが会社を助けてやろう」の感覚で客が詰めかけるようになったわけである。

    正に、言葉は使いよう----なのである。



    
   


<今日のおまけ>


    今回の巨大地震は、複数の場所を震源とする大規模地震が多発的に起きたための大惨事であったことが判りました。

    信州の今朝の地震は、やはり、新潟の中越地方を震源とするもののようで、栄村や野沢温泉村で被害に遭った人たちは、飯山日赤病院へ搬送されたようです。

    須坂市や中野市では、断水のため給水車も出動したとか・・・。

    正に、日本列島の狭さを思い知らされる状況です。

    東京という大都市のもろさも露呈する結果となり、避難訓練もさることながら、いざという際に、被災者がまるごと移住するための第二都市計画を、考える時期に来ているのかもしれません。

    それにしても、福島東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)1号機で、核燃料棒が高温で溶ける「炉心溶融」が起きている可能性が高いと発表された-----とか。

    映画「チャイナ・シンドローム」が現実の物とならないことを祈るばかりです。 

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