認知症行方不明者 [ちょっと、一息 45]


[家]認知症行方不明者



    先日のニュースで、七年間行方不明となっていた認知症の妻の居所がようやく判明し、夫の元に戻った報じていた。

    夫は、認知症を患っている妻の消息が判らなくなった直後に、警察に行方不明者捜索の依頼をし、自らも二万枚のビラを作って妻を捜していたのだそうだが、この情報を受け取っていた別の県警が妻の名前を誤ってコンピューターに登録してしまっていたために、見付けることが出来なかったのだという。

    実は、妻は、行方不明になったその日のうちに、身柄を保護されていたというのだから運命は皮肉である。

    現在、国内には届け出があった人数だけでも一万人以上の認知症行方不明者がいるそうだ。

    この間のテレビ番組では、専門の医師が認知症の症状について話していたのだが、患者は、何処何処へ行こうと思いついて家を出たとしても、途中で何処へ行こうとしていたのか、何のために外出したのかが判らなくなってしまうのだという。

    以前、我が家の近所でも、初期のアルツハイマー型認知症の女性が、役場へ行こうと思い立ち家を出たのだが、途中で何をしに何処へ行こうとしていたのかが判らなくなり、家から十キロほども離れた場所でふらふら歩いている彼女を、偶然見かけた知り合いのタクシー運転手が助けたという例があった。

    また、数年前には、散歩に出たまま帰らなくなったお年寄りが、半月ほどして山の中で亡くなっているのが見付かったということも。

    どうして、いつもは行ったこともない山の中まで入ったのか、家族にもまったく心当たりがなかったという。

    今回発見された妻は、保護されたのち介護施設で生活をしていたようだが、失踪していた七年の間にも認知症はかなり進んでしまっていたようだ。

    とはいえ、彼女の身柄を保護した自治体では、ずっと何処の誰とも判らない女性の生活を生活保護費などを利用して面倒みて来たわけである。

    では、認知症の身元不明者となれば、保護した自治体は無条件でその人の生活を保障してくれるのだろうか。

    生活費が支払えないからといって、簡単に保護を放棄することも出来ないだろうから、面倒みざるを得ないのだろうが、こうした人たちが今後増え続ければ、自治体の財政にも負担がかかって来るに違いない。

    人々の日々の暮らしがひっ迫している昨今、認知症患者の介護に苦しむ家族たちの一部には、むしろ身元不明になることを願うような状況が起きないとも限らないと、説く人もいる。

    七年という長い月日を経てやっと再会した夫婦ではあるが、今後、ほぼ寝たきりになっている妻の介護は夫の肩に重くのしかかることになる。

    再会出来たことが幸せなのか否かは、当事者である夫婦にしか判らない事実であり、他人が無責任に手放しで良かったと喜べる問題ではないのだと思う。

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